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イデオロギーの終焉その3―霊感商法の犯罪性~そして桜田淳子 [時事]

最近、法務大臣が頻繁にかわり、新たに就任する度に、死刑執行がニュースになる。

しかし、こうした、お決まりの報道のあり方には違和感がある。

今、死刑存続やむなしとする人が、85%を超えているといわれている

犯罪が悪質化する現状ではやむを得ないのだが、法に基づき粛々と行うべきかと考える。

担当する一人の法務大臣の主観を取りざたすべき問題ではないし、人の生死を政治問題化するような報道のあり方にはいささかの疑問を感じる。
是は是、非は非というのが正しいあり方なのではにだろうか。

しかし、そうした刑罰を科すプロセスは、十分、人権に配慮し厳格に手続きを踏まなければならない。
ここで、このプロセスを考えてみたい。

私が、法学を学んだのは、1978年の頃だっただろうか。

最初に刑法総論を学ぶのだが、そこでの定義は
『犯罪は、構成要件に該当する、違法、有責な行為』
ということになる。

つまり、悪いことをしたから、犯罪になるのではない。

犯罪とは、人が人を裁くことの厳格さがなければならない。
このことの意味を、自分的に表現するなら、人を裁きにかけることの罪悪感が必要だということだと思う。

だから、人を容易に犯罪者扱いすることは許されない。
中世以前には、『私刑(リンチ)』が横行した。
非常にに残念なことながら、日本にも『村八分』なるものがあった。

これらは、必要以上に過酷であり、しかも、共同体を構成する人たちの力関係で決まる恐ろしいものだった。

もちろん、それら、私的な制裁が、共同体の維持に不可欠なものではあったが、およそ人権という観念は、それらの共同体秩序とは矛盾する側面が出てくる。

そこで、近代刑法は、犯罪と刑罰について、ルールを決めた。

それが、犯罪の定義に結実している。
そして、その決定権を、公開の弁論手続きを経た裁判官にゆだねることとした。
それこそが、人が人を裁ける唯一の方法だと決めたのだ。


私は、近代刑法が、多くの犠牲者の上にできた民主主義、自由主義のルールであることを思うとき、容易に犯罪を語ることができない。
それと、同じくらい犯罪を容易に語ることを見逃すことができない。

それを見据えた上で、この犯罪の定義を見ていきたい。

『犯罪は、構成要件に該当する、違法、有責な行為』

この定義は、よく練られている。

構成要件とは何か
違法とは何か
有責とは何か
行為とは何か

この一つ一つ論点を克服しなければならない。
犯罪を論じる場合、それを、踏まえた上で、刑法各論の各条文にあたって検証することになる。
これを、このブログで表現することはできないが、一つの例を引いてみよう。

霊感商法を例にとってみよう
経済行為は、物々交換に始まり、貨幣経済で隆盛を見た。
人類の基本的不可欠な行為だが、古来より宗教によって歪められてきた歴史がある。

特にキリスト教系の宗教にとって、原罪という観念が深く影響するように思われる。
そこで、原罪を解くために、宗教上、様々なことが行われてきた。

有名なところでは、中世ヨーロッパでは免罪符なるものが発行され、罪から免れるのに、金銭が用いられた。

原罪という感覚の無い日本でも、『地獄の沙汰も金次第』といわれていたし、儒教では性悪説はあるが、現実の経済行為と直接結びつくものではないので割愛する。

日曜日に教会にいって祈りを捧げ、懺悔するのも同じ文脈であろうし、奉仕活動にいそしむのもそうしたことだ。

しかし、原罪からの救済を訴える彼らの言葉は、原罪を背負わない日本人の多くには届かないのではないだろうか。

私自身は、ほとんど限りなく無信仰に近いと思う。
というより、日本人の自然崇拝的な思考があるのかもしれない。

以前,『いなしの知恵』というのを紹介したことがある。
東北の震災を思うに、日本人の災害への対応の特殊性が、海外メディアにより伝えられたことがある。
この厳しい自然環境の中で、自然を恐れ、自然との共存を誓った、先祖たちの精神が今も脈打っていることを確信した。

そうした自然崇拝的な風土では、原罪的なキリスト感は醸成しにくいのではないだろうか。

話は、横道になってしまったが、宗教と経済行為との接点に、霊感商法問題がある。

霊感商法という言葉は、1980年代に、共産党系機関誌『赤旗』により、統一協会の商法に対し作り出した造語であり、そのラベリング自体はイデオオロギー的であるのだが、ここでは、便宜上使用する。

霊感商法とは、どういうことだろうか。
主体の問題から考える。
信者同士であるのなら、法的保護に値するか疑問であるから、信者が一般人に対して行った経済行為が問題になるかと思う。

想定される類型的行為は、
信者が、一般人を勧誘し、霊感を持つとされる人(霊能者)のところ連れて行く。
霊能者は、一般人に、先祖の霊を告知する。
そして、一般人が原罪に共感し、贖罪の方法を求める。
霊能者、またはそれに類する人は、一般人の弱みにつけ込み、物品を販売する。
もちろん、それらを企画・指示した人がいる。

ということではないかと思う。

Wikiによれば、霊感商法に対し民事裁判は多数起こされているとのことであるが、刑事犯となったのは、1件ということである。それは、恐喝罪であった。
詐欺罪の適用はないとのことである。

恐喝罪の類型性はわかりやすいが、詐欺罪は少し難しい。

営業行為の過程の中で、大なり小なり事実が告げられなかったり、うそが伴うこともあるだろう。
もしかしたら、結婚するときだって、『君を幸せにする』と人生最大の嘘をついた人だっていると思う。

しかし、嘘がすべて、刑法でいう詐欺罪になることはない。
詐欺罪になるには、いくつかの要件をクリアーしなければならない。

まず、典型的には、欺罔行為(欺く)があり、その結果として、相手方が錯誤におちいり、財物を交付するというプロセスをたどることなる。

例を引こう。
Aが、Bに対し、壺を売る。
その際、『これは明朝時代の景徳鎮の壺だけど、100万円にまけとくわ。これが鑑定書よ』といったのを信じて買った。ところが、明朝時代の景徳鎮産ではなかった。
これは詐欺罪になるかもしれない(ほとんどのケース警察では相手にしてくれないが)。

これならどうか。
Aが、Bに対し、この壺を買えば、今までの不幸なことはサタンのせいで、この壺を買えば、サタンが寄りつかないわ』といったとする。
Bは、Aが一生懸命なので、かわいそうだな。買ってやれば、この娘も救われるかも知れない、と思って買ったとする。

これは詐欺罪には決してならない。

なぜなら、Bは、錯誤に陥っていないし、買う動機とAの行為の間には因果関係が無いからだ。

因果関係とは、条件説でとらえれば、『AがなければBがない』という関係だが、この場合、条件関係は切断されている。

もちろん錯誤に陥るという、判断は難しいだろう。
主観説、客観説、折衷説などの論争を待たねばならないこともあるかも知れない。

しかし、壺を手にする人の購買層はあるだろうし、ある程度のステータスがあるだろうから、その判断能力は、支払う金額に見合う場合が通常だと思う。
並の営業マンでも貧しい人に営業行為をするより、富める人をねらうのは当たり前のことだ。

もちろん、営業行為を仕掛ける方と、買い手との情報格差が大きい場合や、老人、子供などの判断能力に疑問がある場合は、弱者救済の発想は必要なのはもちろんだが。

そして、以前経験したことだが、経済行為という民事問題に不介入というのが刑事原則といっていい。

そうした常識を踏まえて、なおかつ、犯罪を語ろうとすることには、イデオロギーのにおいがする。

戦前、憲兵隊などは、思想犯とくに、共産主義者を徹底的に弾圧した。
日本の戦局が厳しくなるとさらに弾圧が加えられた。
イデオロギーとはそういうものだ。理性を超えた結論を導くことが多い。

しかし、戦後60年以上が経過し、そうした、感情で法を語ることを、認めるわけにはいかない。
自由主義的ルールは、我々の諸先輩が勝ち得た成果なのだから。

と同時に、マスコミが騒いだから死刑にしないとか、マスコミが騒がなくなったから、霊感商法を処罰しないとかいう論争は論外といわなければならない。

こういうものを、法治国家といわない。
最近、政府見解の中で、『法の支配』といわれることが多いが、この場合、同じ文脈で捉えていいと思う。

本ブログは、桜田淳子という芸能人が、いかに芸能界を追われたかを検証することが動機付けとなっている。
桜田淳子さんは、今から40年前、1973年2月25日、歌手としてデビューした。

そして、今から20年前、芸能界を追われるように去って行った。

当時の一部の芸能マスコミのバッシングはあきれるばかりだった。
彼らは、検察官にでもなったような質問を繰り返した。
たった一つの答えを引き出すのが目的だった。

その中には、テレビで名声を得たものがいる。

そして、その後、桜田淳子さんの復帰の噂が出るたびに、または行動を起こすたびに批判し続けている。
こうした光景は目に余る。

今、桜田淳子さんという人が忘れ去られようとしている。
そして、記憶を呼び戻そうとしている人もいる。

僕は、桜田淳子さんの復帰した場合を思うとき、無能な批判者の売名行為に利用されることに我慢できない。

批判すべきは、統一協会自体にあるはずなのに、すり替えた議論で満足している。
僕には売名行為としか思えない光景だったことを、今日という日に記録する。

そして、この竹槍のような粗末なブログに記録することにより、後世の良識に託したいと思う。
半年後の参議院選挙を見ながら。

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